事務局からのお知らせ

特別寄稿 辻 祐一郎 先生(現 福島赤十字病院 小児科)

東日本大震災9年後の福島で勤務することになったのは

私が初めて被災地に足を踏み入れたのは、震災の翌年でした。場所は宮城県気仙沼市立本吉病院です。

ある朝のNHKテレビで「インフルエンザワクチンを被災者の人たちに打ちたくてもドクターがいない」との当時の本吉病院川島院長の報道を観たからです。“インフルエンザワクチン接種なら僕にもできる”と考え、その日に勤務先のせんぽ東京高輪病院(現JCHO東京高輪病院)の院長に派遣のお願いに行ったところ「気仙沼の船員保険組合療養所も大きな被害をうけた。お前で何か役立てることがあるのなら直ぐに行ってこい」との事で旅立ったのが始まりです。本吉病院では、小児科しかできない私にスタッフが優しく接して下さってかえって私が癒されました。何度も何度も沢山の方々から同じことを聞かれて話したであろう震災の当日の様子を面倒なそぶりも見せず話してくださいました。その後、陸前高田の高田病院、岩手県立大船渡病院でも短期勤務させていただきました。

これまで、小児科オンリーの診療をしてきた私にとって、成人の外傷や高血圧の老人の診察などをさせていただき本当に貴重な体験でした。

「東北に医療支援に行ってきます」と言って東京を出かけてきた私は、震災後の東北で診療を経験することによって勉強をさせていただき、そして癒していただいたのです。

実際は「東北に癒してもらいに行ってきます」でした。

本当に感謝・感謝・感謝です。

その後は、週末のみの勤務が可能な福島県公立相馬病院小児科に伺うことになりました。

この相馬病院小児科の伊藤部長との出会いが、私の人生をくるわせることになりました(笑)

相馬病院での勤務の際は、土曜日の昼に東京を出発して夕方に相馬に到着します。そこで先ずは病院が用意してくれる「ホテルふたばや」にチェックインします。この「ホテルふたばや」が重要です!どうしてかは、ご自身で体験して頂ければと思います。

初めて公立相馬病院に伺った際には、伊藤部長先生が震災時のお話や今の相馬の状況などをたくさんお話して下さいました。

公立相馬病院小児科の週末勤務に来られる先生方はほとんどがリピーターと伺っておりますが、私は「ホテルふたばや」と「伊藤部長(副院長)」の二つのファクタが原因であると確信しております。

その後、この不思議なご縁が数年間続きました。

そしてなんと伊藤先生のお口添えで、令和2年4月から福島赤十字病院小児科で勤務しています。福島県立医大小児科細矢教授のご高配を頂きとうとう常勤医になってしまいました!

まだまだ話したいことはたくさんありますが、長くなりましたので終わりにします。

(まとめ)

福島に来て思ったことは、「空がとても青い」事です。決して東京では見ることができません!

周りのスタッフに「福島の空は青くてとてもきれいだね!」と話しかけるのですが、返ってくる返事はいつも同じで「そうですか⤴いつもとかわんないですけどね⤵」と独特のイントネーションで返ってきます(笑)

もし、ご自身の勉強と癒しを求められているのでしたら、私からは「福島や東北に来て、どこまでもどこまでも青い空をご自身の目でみてみてください!そして癒されながらたくさんたくさん勉強してください!」とお伝えしたいです!

福島赤十字病院 小児科 辻 祐一郎

写真は2016年ご支援当時(事務局掲載)